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配偶者特別控除廃止について

与党税制調査会は、12月13日に2003年度税制改正大綱を決定した。その中のひとつに、配偶者特別控除の所得控除廃止を盛りこんでいる。実施時期は、2004年(平成16年)1月からで、所得税および個人住民税(平成17年度徴収)が影響を受けることになる。
配偶者特別控除は、所得がない、もしくは一定以下の配偶者が対象となるものである。この配偶者特別控除は高度経済成長期に「サラリーマン+専業主婦」という家族形態が一般化したため、専業主婦を持つ家庭への税制優遇を目的に1987年に創設された比較的新しい制度(創設当初は35万円、その後1995年に38万円へ引き上げ)である。
今回の廃止理由は、バブル経済崩壊後の低迷する税収減により、厳しさを増す財政事情を考慮したものであり、この控除の廃止をめぐっては今後も大きな話題となるであろう。そこで今回は配偶者特別控除廃止に関して、「一般家庭への影響」「税制調査会の考え」「現在の所得税制度の問題点」などを考えてみる。

まず、「一般家庭への影響」として、所得がまったくない専業主婦の場合の世帯で考えてみると、以下のようになる。

課税所得 税率 廃止による所得税・住民税の増税予想額(注1)
所得税 住民税
200万円以下 10% 5% 5.45万円
200万円超〜330万円以下 10% 10% 7.1万円
330万円超〜700万円以下 20% 10% 10.9万円
700万円超〜900万円以下 20% 13% 11.89万円
900万円超〜1,000万円以下 30% 13% 15.69万円
1,000万円超 --- 影響なし(注2)

注1:定率減税分は考慮せず。注2:年間所得1,000万円超の場合、配偶者特別控除は非適用となっている。

 

2000年現在で配偶者特別控除の適用を受けているのは、民間の給与所得者のうち年末調整を行った約1,151万人と確定申告を行った205万人となっている。よって、この改正で合計約1,356万人が増税となる可能性があるということになる。また、増税額でいえば、最高で約16万円程度の増税になる世帯が発生するということになる。

では、雑誌・新聞が最近盛んに取り上げるように、多くの世帯が増税になるので配偶者特別控除の廃止は反対すべきなのであろうか?また、約1,356万人に影響がある増税を行おうとする「税制調査会の考え」の真意はどこにあるのか。それは、「納税に関しての不公平感の是正」を行うことではないだろうか。
「現在の所得税制度の問題点」は、ひとことで言えば給与所得者に占める非納税者の多さである。2000年において、給与所得者に占める非納税者の割合は何と18.9%となっており、給与所得者の5人に1人が非納税者となっている。このことは、望ましい税の3原則の「公平・中立・簡素」のひとつである公平という観点から言えば、問題があるのではないだろうか。なぜなら、2割の非納税者のしわ寄せが現在の納税者へきているという考え方ができるからである。確かに個々の事情があり、一概に非納税者を語ることはできないだろうが、全体の2割というのは少々問題はあることも事実であろう。そして、このような歪みを生み出している根源が、先進国においてもかなり充実した所得控除、特に人的控除であることがたびたび指摘されている。
例えば、専業主婦+子ども2人の場合の非課税世帯となる給与収入は、年収384.2万円にもなる。同一条件でほかの先進国で比較したものが以下の表である。

【専業主婦+子ども2人の場合の非課税世帯となる給与収入限度額】

日本 ドイツ イギリス アメリカ フランス
384.2万円 383.3万円 137.8万円 315.3万円 298.1万円

日本の水準は、ドイツと同程度、それ以外のイギリス、アメリカ、フランスよりは高くなっていることが分かるであろう。またドイツはかなりの財政難に苦しんでおり、現在は増税路線へと政策転換している。
もし、この配偶者特別控除が廃止となれば、非納税世帯は確実に減少し、その結果、税負担の公平性は向上することになる。つまり「増税だから反対」という議論とはまったく異なり、「税負担の公平性向上」という効果があるのである。しかし、「税負担の公平性向上」を目指すのであれば、配偶者特別控除の廃止だけを行った場合、1,000万円以下でかつ課税所得が高い人、いわゆる中間所得層ほど増税になることは間違いない。
そこで一層の「税負担の公平性向上」に向け、2004年以降の配偶者特別控除廃止の際には、今回の廃止で最も増税となる中間所得層を中心に、所得税率の引き下げを同時に実行してほしいものである。そうすれば、課税最低限の引き下げによる非納税者の減少、そして所得税率引き下げによる中間所得層の税負担の軽減を同時に実現することができるのではなかろうか。今後の自民党の税制調査会およびメディアなどの税制改正に関する議論の論点は、増税か減税かということではなく、誰にとって増税か減税かを明確にして議論が行われることをぜひ期待したい。